朱鷺と竜の混血『朱鷺宮家』の長男．
突然天涯孤独の身となった彼は，手の中にあったはずの「何か」を探しに旅に出る．
彼の素性を知るものは1人もいない．
彼の持つ『自分なりのやさしさ』の裏には，どんなものが隠されているのだろうかー
私の過去
東北の奥地に家族と共に暮らしていた私は，貧しいながらも笑顔のあふれた生活をしていた．
ある雨の日，いつものように出稼ぎから帰宅すると家には両親と弟たちが血まみれで倒れていた．
慌てて駆け寄り首筋に手を当てると…時すでに遅し．
あまりにも惨い永遠の別れ．
後悔と自責の念に支配され，私は力なく座り込んだ．
ふと，母の頭上に見覚えのない手帳と何かが書かれていることに気づく，
「生きろ」
その瞬間，私ははじかれるように手帳を取って，外に飛び出した．
黒い雲が山間の空を埋め，雷鳴がとどろく．
だが，私は走るのをやめなかった．
私の失ったものを取り戻すために．
目からこぼれた涙のかけらが雨と溶け合って流れ落ちる．
濡れた体にかまうことなく走り続ける1人の麗竜の姿は
立ち込める濃白な霧の中に消えていったー
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アクア=カンピオーネ 