ENo.608 ナナミ 
プロフィール

ある世界に、一人のあかんぼうが生まれました。

『特別な子供』として産み落とされたあかんぼうは、生まれた時からとくべつな眼を神様から授けられていましたが、神様はその眼の代わりに、あかんぼうの両腕を貰っていってしまいました。

神様に両腕をもらわれてしまった赤ん坊ですが、代わりにもらったとくべつな眼は、いろいろな事ができました。
物をもちあげたり、とても遠くのものが見えたり、人の心が見えたり、未来が見えたり。

とてもすごい赤ん坊は、七つの世界を見る人、として、ナナミという名を授けられました。
そして、とてもえらい神社の、とくべつな巫女様として、ナナミは大切に、大切に世話をされて、ナナミもまた、その神社の為に、沢山のきせきを、その眼で起こしました。

でも、沢山のきせきを起こしてしまったナナミの眼は、とても疲れてしまいました。
ナナミの眼は、だんだん見えなくなっていきました。
見えなくなるにつれて、とくべつな眼は、とくべつな眼ではなくなっていってしまいました。
ナナミもだんだん、腕の無い特別な巫女様から、腕のない、目の見えない、とくべつじゃない人になっていきました。

そのうち、ナナミの見える世界が殆どまっしろになったころ。
神社の人たちは、ナナミのお世話をしたくなくなってしまいました。

ナナミも、自分の見える、殆どまっしろになった世界の中で、神社の人たちのそんな気持ちを見ました。
だからナナミは、神社の人たちから離れて暮らそうと思いました。
神社の人たちは、今までありがとうと言いながら、ナナミのその気持ちを、そんちょうして、ナナミを見送りました。

ナナミは、腕の無い、目の見えない、御子じゃない、ふつうの人として、今は暮らしています。

めでたし、めでたし。


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